デラウエア州での法人設立は 実際に有利?

ビジネス拡張にともないアメリカで法人を設立する際に最初に必要とされるのは、法人登録をする州の決定です。

頻繁に語られているのは、デラウエア州が税制や法人管理の上で最も法人設立に有利であり、多くのビジネスが同州で法人設立することを選択しているということです。デラウエア州は法人の設立誘致の歴史が長く、会社法の充実や事業に関する裁判例の豊富さ、他州に比べ投資家に有利な会社法、同州の会社法に馴染みがある投資家や弁護士が多い等の理由から法人設立に好ましい州となっています。

デラウエア州での法人設立が一般的に好まれている一方で、同州で法人設立ことで不利や不便となる状況も多くあることを理解することが必要です。

結論から言いますと、殆どのスタートアップ事業の場合の法人設立は、事業を行う州で設立登記をするのが賢明であるということです。

例えば、カリフォルニアで事業をおこなったり事務所を維持するビジネスがデラウエア州で法人設立をすると、当該ビジネスは事業を行うカリフォルニア州でも州外法人としての登録が必要になります。税金に関してはデラウエア州で事業所得がなければデラウエア州所得税は課せられないのですが、同州で登録をしているので、Franchise Tax(登録税)の対象となります。事業を行うカリフォルニア州では事業所得の申告と納税が必要となります。

全米で事業を展開する大手企業がデラウエア州の会社法や税法の利点を駆使して恩恵を得ることが可能となることがありますが、複雑な州の会社法や税法を有利に活用するには適した法人の規模、専門家の知識とコストが必要であり、殆どの場合、平均的な中小法人が同様なスキームで利益を得ようとするのは合理的な選択ではありません。

デラウエア州で法人登録をするには、Registered Agent (登録代理人)を雇う必要があり、前記のFranchise Tax に加え毎年費用が必要となります。もしデラウエア州法人が訴訟に巻き込まれた場合、デラウエア州の認可を得た弁護士を雇用し、デラウエア州の裁判所や調停所に出頭しなければならないこともあり得ます。また会社を清算する場合は、事業を行っている州の登録とデラウエア州の登録の両州からの撤退、抹消作業が必要となります。

以上のことから、デラウエア州の外が事業の拠点や取引の場となる場合に、デラウエア州で法人登録をすると、デラウエア州法の利点を活用することのなく、他州への申告と納税の二重の手間と費用が掛かる場合が多いとうことになります。