米国における売上税(Sales Tax)について

今回のニュースレターでは、米国で事業を開始予定の企業や、すでに事業を行っているものの売上税に関する理解がまだ十分でない企業の皆さまに、基本的なポイントをわかりやすくお伝えします。 米国の売上税の仕組みは一見シンプルに見えますが、連邦政府ではなく州政府が管理しているため、実際には複雑であり、企業はネクサス規制を含む45州の異なる売上税法に対応する必要があります。(なお、5州では売上税は課されていません。)
米国の売上税と日本の消費税の違い

売上税の基本的な特徴や目的は世界共通であり、政府の歳入を確保するために消費者に
課される定率税という点では同じです。しかし、米国と日本では、この税の規制方法、
負担者、課税のタイミングに大きな違いがあります。


日本の消費税制度は付加価値税(VAT)を採用しており、生産から小売までのサプライ
チェーン各段階でほとんどの財やサービスに課税されます。ただし、企業は仕入れにか
かる税額を控除できるため、最終的な税負担は消費者のみが負う仕組みです。


これに対し、米国の売上税はよりシンプルで、財やサービスが最終消費者に渡る取引の
最後の段階でのみ課税されます。この方式の利点は、複数の徴収や報告が必要なVAT制
度に比べ、運用が容易な点にあります。


一方で、日本の制度は各段階で取引履歴が残るため、徴税の透明性や確実性が高いとい
うメリットがありますが、米国の制度は一度きりの徴収に依存するため、徴収漏れや税
回避のリスクが高まります。そのため、米国の州税当局はコンプライアンス違反を防ぐ
ため、売上税に関する監査を定期的かつ広範囲で実施しています。

管轄権とネクサス

前述のとおり、米国では売上税は連邦政府ではなく州政府が管轄しており、これは日本
のように国レベルで消費税を管理する仕組みとは大きく異なります。


日本では、消費税は商品の引渡しや役務提供に基づいて課税され、購入者や販売者の所
在地は、原則として課税に影響しません。一方、米国では州が管轄するため、購入者と
販売者の所在地が非常に重要であり、ネクサスとコンプライアンス義務を決定する要因
となります。一般的に、ネクサスとは、州が企業に課税する前提となる「企業と州との
関係」を指します。各州は、購入者がその州に居住し、販売者が州にオフィスや従業員
などの関係を持っている場合、売上税を課すことができます。


2018年以前は、米国最高裁判所(Quill Corp v. North Dakota, 1992)の判決により、州
が売上税を課すには販売者が州に「実質的な物理的存在」を持っている必要がありまし
た。これは、オフィスや倉庫、在庫、従業員などの物理的な拠点を州内に持つ場合、ネ
クサスが成立することを意味します。したがって、州内で売上があっても物理的な存在
がなければ、売上税の義務はありませんでした。


しかし、2018年の最高裁判決(South Dakota v. Wayfair Inc)によって、このルールは
変更され、「経済的ネクサス」が新たに導入されました。これにより、取引額や件数が
ネクサスの判断基準となり、物理的な拠点がなくても一定の条件を満たせば売上税の義
務が発生します。(なお、物理的存在に基づく従来の規制は引き続き有効です。)


この改正は、Amazonなどのオンラインマーケットプレイスを含む電子商取引の急速な
発展により、商取引のあり方が大きく変化したことを裁判所が考慮したものです。また
、税法も見直され、州に物理的な拠点がなくても、経済的ネクサスの基準を満たせば課
税対象となりました。例えば、カリフォルニアの企業がイリノイ州に商品を販売し、年
間取引額が10万ドルを超える、または取引件数が200件以上の場合、その企業はイリノ
イ州でネクサスを持つと見なされ、売上税の義務が発生します。


その結果、企業はイリノイ州に事業登録を行い、売上税を徴収・納付し、期限内に報告
書を提出する必要が生じます。また、新法施行後の過去分についても遡及的に課税され
る可能性があります。


したがって、物理的拠点を持たない企業は、各州での売上額と取引件数を慎重に監視し
、ネクサスが成立しているかどうかを判断する必要があります。

重大なペナルティ

企業(販売者)は購入者から売上税を徴収する徴収代理人と見なされます。州はこれら
の税金を州の財産と考え、コンプライアンス違反を非常に厳しく扱います。州によって
は、違反を刑事犯罪として扱い、重大な罰金を科す場合もあります。さらに、未払い額
には利息が加算されます。


また、このようなケースでは時効が適用されない場合があり、州は企業がネクサスを持
っていたすべての年度に遡って追及することができます。つまり、売上税の徴収、納付
、申告義務が過去分も含めて課される可能性があります。

売上税の責任
売上税は最終的には購入者や消費者が負担するものですが、販売者が税金を徴収・納付 しなかった場合、その責任は販売者にあります。つまり、徴収義務を怠った場合、未納 税額を販売者自身が支払わなければなりません。
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