CEO 堀田芳正 特別インタビュー

ビジネス・生活情報誌「便利帳シリーズ」の最新作、「アメリカで会社設立・経営・上場・買収を目指す」にPOSIの堀田のインタビューが載りました。POSIの特徴が記載されていますのでご覧頂ければ幸いです。
私たちの役割は例えるならば
「ファミリードクター」であり、必要に応じて
外部の専門家とコラボレートすることができます。
「ワンストップサポート」については。

アメリカへ進出を目指す法人のお客様のサポートとして、「ワンストップサポート」があります。アメリカ法人設立の会社登記から、税務コンサルティング、人事業務サポート、財務や会計業務アシストに至るまで、アウトソーシングとして業務を受託。それ以外にも、ビザ発給であれば移民法の弁護士、人材、不動産、M&Aであれば、第三者として適切な専門家を紹介しています。アメリカ法人を設立するに当たってはレジスターエージェント(登録代理人)が必要で、これは州政府などから届く通知や命令に関する書類を受け取り、依頼法人に知らせる役割を担います。私たちは、カリフォルニア州に承認されたレジスターエージェントであり、提携先を通して全ての州において代理人業務の提供が可能です。

アメリカ市場への進出にはさまざまなプロセスがあるため、自社のコア業務を遂行しながらこれらのリサーチを並行することは容易ではありません。私たちは、フェーズにかかわらず必要な法的処理を一括して対応できる窓口を設けることで、お客様が効率良くビジネスを立ち上げられるようにサポートしています。さらに、具体的な手続きを踏む前にアメリカ市場の現状について話をしながら、お客様それぞれに合ったサポートの形を提案しています。

会計や経理のアウトソーシングを利用する際のポイントは。

バックオフィス業務を丸投げするのではなく、事業主の皆様自身が業績と費用の数字の他、会計や税務などに興味を持ち、自社のお金の流れや規制の変化を把握することが大切です。特に、アウトソーシング利用の意思決定に時間をかけ、事業主と事務所(プロバイダー)がどのような条件で協力するかを明確にしてください。事業の途中で事務所を変更することは混乱を招く可能性があるため、初めから長期的な関係を築くことにコミットすることが重要です。契約期間が終了する前に契約の再交渉が必要になるかもしれないので、柔軟な契約であったほうが双方に利益をもたらします。事務所には改善や革新を促し、事業主側は変化する状況に対応しやすくなると思います。

下村会計事務所と合併に至った経緯。

2024年にPOSIは、下村昌樹が設立した下村会計事務所と合併しました。同事務所は給与業務から税務、会計監査などを1人で幅広く担当できるスペシャリストが集まる組織で、中小企業クライアントには理想的な公認会計士事務所でした。そこで、このような技術と能力をPOSIの若手社員にぜひ継承してもらいたいと考えたからです。更に、同事務所はニューヨークを中心に事業を展開していたので、ロサンゼルスが本地であるPOSIにとっては支店の拡大につながるメリットもありました。しかしそれ以上に、合併の決定的な要因は、下村と私の経営者としての価値観の一致です。下村会計事務所は評判が良かったので、他からも好条件でM&Aの声があったと聞いています。ご存知の通り、M&Aは組織の規模とマーケットシェアを拡大し合理化を図り、法人価値を上げることが主な目的です。ですが下村はそうではなく、従業員の要望を尊重し働きやすい環境を提供できる合併相手を優先した結果、POSIを選択してくれました。

また、ブランディングの観点から、社名については「POSI」にそろえています。企業経営を長期的に見据えた場合に、ファームネームに人名が入っていると、その名の持ち主のイメージと個人経営の印象をもたれてしまいます。もちろん双方が将来を考え納得した上で統一しています。あくまで合併とは、相手企業の規模の大小を問わず、お互いに良いところを生かすために一緒になることであり、最終的にどちらの社名を残すかは話し合ったうえでの判断になります。

合併のメリットと注意点は。

お互いにないものを補うことが、合併において最大のメリットだと思います。その反面、企業文化が異なる2つの会社を融合する難しさもあります。合併して間もないときは、誰しも自分の仕事と所属していた組織に自信を持ち、今までしてきたことを継続したいと思います。ですが、お互いを認め合えるように社員を導いていくのがリーダーの役目だと思っています。時間を要しますが、両者の良さを最大限に生かすことに専念しながら、社内環境を整えていくことが大切です。また、合併により組織が大きくなるので、スケールメリットを享受できます。基本的に人員が増えるため、新たな部署の設立だけでなく、実務の他に周辺のサポート部隊を雇用することも可能になります。POSIでは、東京やフィリピンオフィスの拡充の他、社内のIT関連における人材や設備に再投資をしたいと思っています。

注意点として、合併のタイミングはとても大事です。私たちは1月1日に合併を行ったことで、繁忙期手前のため従業員に苦労をかけてしまいました。より良いシナジー効果を生み出すために、従業員のストレスを増長させないよう、合併のタイミングは慎重に決めてください。

アメリカでビジネスを行うメリットは。

現実問題として日本の少子高齢化が進むなかで、アメリカの人口は増加し続けており、地政学的に見ても強い国なので、長い目で事業を継続していくならばアメリカに本拠地を設けることは必要ではないでしょうか。日本にいると平和であまり変化を感じられず、政治批判はしていても現状維持ができる感覚になりがちです。しかし外から見ると、昨今の円安や近隣諸国の問題など、日本の不安定な状況を心配せずにはいられません。

高まるリスクを分散できる点も、メリットとして挙げられます。よく日本がガラパゴス化といわれてしまう理由として、良い商品やサービスがある一方で、海外マーケットを重視していないために外から支持されにくいという現状があります。「自分たちの商品は優れているのに、どうしてアメリカで売れないのだろう」と考える日本人が多いですが、それはマーケットを分析できていないからです。既にアメリカと取引があり遠隔で商売を行っている企業もありますが、現地には踏み込めないため理想と現実の差異が生まれやすく、適切な判断がしにくいものです。やはりアメリカに来てここから日本を見ることで、世界が何を望んでいるのかを知ることができますし、その感覚が身につくと思います。

また、アメリカに子会社を設立することで「世界に目を向けている企業である」ことを内外にアピールできます。企業マーケティングにおいて、自社のブランド認知度は上がりますし、雇用においても若い人にとって魅力的に映るため、アメリカ法人を持つことは有益です。

アメリカ進出へのアドバイスは。

プロジェクトマネージャーや代理人ではなく、まず事業主が先頭を切り企業進出に向けて動くことです。日本の大手総合電機メーカーの成功例として、経営トップが自らアメリカに駐在して販路を開拓し、現地法人の指揮を執ったことで、世界的企業にまで成長しました。やはりトップが現地に赴く意思を持ってビジネスプランを検討することが重要です。

その他の具体的なアドバイスとしては、進出前のリサーチや、アメリカ国内での補助的な活動の段階であっても、適切なビザを取得してから入国するなど、アメリカのルールを遵守するようにしてください。アメリカ国内での事業活動と見なされた場合には、現地にオフィスがなくても課税対象になることがあります。また、アメリカに法人を設立したことにより、日本国内からアメリカに向けて行っていた事業活動がアメリカ源泉の商行為と判断されることもあります。これは税務上の問題が出てくるため、必ず会計士に事前に相談してください。また、アメリカ法人を設立する際の州選びですが、州の会社法が経営者や投資家にとって有利な点を鑑みて、デラウェア州を選ぶ企業が多くあります。しかし私たちは、多くの場合において実際の事業拠点に合わせて法人設立も同じ州で登記することをおすすめしています。例えば、設立州以外で事業活動を行うには、新たにその州で事業登録を行う必要があり、申告や州税の義務が2重に発生するなど手間と費用がかかるからです。

自身の経歴については。

もともと会計事務所大手のデロイトに勤めていましたが、1990年に堀田&カンパニーを創立して起業。その後に、デロイトの後輩だった齋藤と税務専門で業界の大先輩であるリーゼンバーグが参加することになり、2000年に堀田リーゼンバーグ齋藤会計事務所に改名しました。20年間務めた間に事務所は急成長。組織が大きくなるに連れてお客様のニーズは広がりましたが、でき上がった組織をサポートする業務が多くなりました。もちろんそれが大手企業が求めるサービスなのですが、私が独立した動機を思い返してみると、起業を目指す方や中小企業の成長をサポートをしたいという気持ちがありました。そこで、事務所が軌道に乗り目処がついたところで事務所を5人のパートナーに任せ、私は中小企業のサポートに力を入れているPOSIに参加することを決めました。今では、お客様に寄り添って小回りが効くサービスを提供できることに、大変やりがいを感じています。

今後の目標は。
AI化がますます進むことで、会計業務は代替される可能性の高い仕事として挙げられます。そのなかで、どのように継続していくのが適切なのかを経営者として常に考えています。プロフェッショナルである私たちは、事業において収益目標を先ず掲げるのではなく、顧客志向でお客様のニーズを最優先に応えていくことがミッションであり、それが私たち自身や組織の成長を支えると思います。さらに組織づくりにおいては、従業員が安定して幸せに暮らせるように、ワーク・ライフ・バランスの推進やサステイナブルな職場環境を構築することです。また、今後は日本側への貢献にも努めていきたいですね。こちらで経験を積んだ人材が日本に戻ることで、日本のビジネスの活性化につながるのではないかという希望を持っています。これからも日系企業や事業主のグローバルなビジネス展開を支援し続けていきたいと思っています。

おすすめの本は?:歎異抄をひらく(高森顕徹著)
毎日行う習慣は?:ポッドキャストを聞きながら寝ること
座右の銘は?:和顔愛語先意承問 わがんあいごせんいじょうもん
 (笑顔と優しさで相手を思いやり、先回りして尽くすこと)

堀田芳正 Yoshimasa Hotta

デロイト・アンド・トウシュ(現 デロイト)でシニアマネージャーとして勤務した後、1990年に堀田&カンパニー(現 堀田リーゼンバーグ齋藤)を創立。「お客様に寄り添い小回りが利くサービス提供」を目指すPOSIの創立に尽力し、2011年から現職。米国公認会計士、投資アドバイザーの資格(IAR)を持つ。趣味はガーデニングで、自家栽培した野菜や果物を使った料理をふるまうことを楽しみにしている。

『アメリカで会社設立・経営・上場・買収を目指す』

アメリカ在住邦人向けビジネス・生活情報誌「便利帳シリーズ」の最新作! 事業規模別を問わず、アメリカでの会社設立に必要な各プロセスを紹介。