2023年第2四半期 米国経済・投資市場レビュー

期待以上に良好なものの、景気後退のリスクは残る2023年第2四半期 米国経済と株式市場について、労働市場、インフレ、Fed緊縮サイクル、他国経済等の視点を含めてレビューします。
経済は期待以上に良好だが、景気後退のリスクは残る

全体的に米国経済はこれからも緩やかなペースで成長するはずです。景気後退は確実に起こるとは言えなものの、成長が鈍ることで経済はより何らかのショックに対して敏感になるでしょう。特に顕著な商業不動産の弱さにより、成長が鈍った経済が更にリセッション(景気後退)に入るリスクがここ一年は残るでしょう。

労働市場は景気後退に入る兆しを示している

全体的に、労働需要の冷え込みから、今後数か月で雇用の増加は鈍化するでしょう。実際、マイナスに転じる可能性すらあり、それは経済が景気後退なるであろうことを示すサインとなります。

失業率はわずかに上昇する可能性があります

景気の減速とコスト上昇に直面して企業が採用を減らしているにもかかわらず、失業率はわずかに上昇するだけでしょう。しかし、賃金の成長は引き続き鈍化し、連邦準備制度(Fed)にとってインフレが持続的に減少しているという認識への自信を持たせることになるでしょう。

インフレはより管理しやすい水準になる見込みです

改善された供給チェーンと緩和された労働市場の緊張は、今後の1年でこのインフレ指標を下げることを可能にするでしょう。

インフレはFedが望むほど急速には減少していないかもしれませんが、徐々により管理しやすい水準に向かっています。CPIインフレは今年末までには年間3.5%まで減少し、2024年末までに2から3%に向かうかもしれません。これは米国の景気後退なしでも実現するでしょう。

S&P 500の収益は下方向へのリスクがあります

経済的な向い風にもかかわらず、株式市場は今年これまでに好調で、第1四半期の収益シーズンが予想を上回り、Fedの緊縮緩和の見通しに支えられています。S&P 500の運用収益は前年比6.4%、前四半期比4.3%増加しました。利益率も11.7%に上昇し、企業が利益率を守ることに成功していることを示しています。ただし、来年に景気後退のリスクが高まるため、利益の見通しはさらなる下方圧力を受けるでしょう。

現時点では、株式に対して楽観的すぎることは要注意です。今年のパフォーマンスは改善されましたが、低金利期待によるバリュエーションの拡大が主な要因です。また、緩和政策への期待も過度に楽観的なようなので、期待への調整となるとバリュエーション倍数がさらなる圧力を受ける可能性があります。成長の減速が利益の見通しに影響を及ぼすことで、これは株式市場にとって厳しい状況を作り出します。そのため、私たちは質とキャッシュフローに焦点を当てた安定株式で防御的な立場を取ることを選ぶべきでしょう。

連邦準備制度(Fed)は緊縮サイクルの終了が近づいています

2022年の初め以来、Fedは持続的で高いインフレに対抗するために利上げを累積で5.00%行ってきました。Fedは6月の会合では、緊縮開始以来初めて金利を5.00から5.25%の目標レートで据え置くことを決定をしました。この動きは広く予想されていたものの、指針はインフレのコントロールの優先が採用されました。

FOMCメンバーの中央値予測では、年末の連邦ファンド金利は5.6%になるとされており、これは今年2回の追加利上げを意味し、2024年まで利下げはないと示しています。委員会はまた、2024年と2025年の利率予測を引き上げました。これは、インフレの高水準が長期にわたることで高度の緊縮的な金融政策を要するであろうとの考えを反映しています。

米国以外の世界経済は依然として強気です

中国では、COVID制限の解除により、過去3年間の制限された活動の後に消費が回復しています。旅行やレジャー支出は強力に回復していますが、他のサービスや商品の支出は引き続き民間企業と消費者の信頼の回復に依存しており、これは未だ冷めたものでした。

それにもかかわらず、中国の回復は貿易相手国や欧州とアジア全般の観光地にとって強力な追い風となるでしょう。そのため、米国の成長とは異なる経済の成長の道が出現し始めており、米国は減速している一方で、欧州、中国、および広範なアジア地域が加速しています。

新しいドル安サイクルが始まるかもしれません

長いドル高サイクルが終わりに近づいている可能性があります。昨年9月に20年ぶりの高値に達したドルは、6月末までに約10%下落しました。

昨年のドルの上昇要因は今では後退し、新たなドル安サイクルの可能性を示しています。長期的には経済がドルを徐々に押し下げる可能性があります。近い将来には、成長と金利の差が狭まるため、持続的なドル高が続くことはないでしょう。ただし、ドルは安全資産であり、不確実性の高い期間には一時的に強いパフォーマンスを見せる可能性があります。

今年の株式市場の上昇にもかかわらず、長期的なチャンスはまだ存在します

昨年の広範な市場売却の後、現在のバリュエーションは資産クラスの全般で投資家に良い機会を提供しています。市場は低水準から回復していますが、現在のバリュエーションは2021年末の高い水準と比較して依然として魅力的に見えます。

米国債、コア債券、地方債は引き続き平均的な評価水準を下回っていることから、固定収益型は引き続き魅力的に見えます。特に国際株式は歴史的な割引価格で提供されており、米国市場の一部、特に大型株や成長株は、第2四半期の強力なパフォーマンスの後なので、若干割高に見えます。株式市場では、投資家は国際市場に傾いており、長期的なリターンをもたらす見込みのある魅力的な国際企業に焦点を当ててきています。また、金利が低下し始めると、今保有の固定収益への投資の価値が上昇する機会となるでしょう。